第9章 第8章 遊園地
桃花は困ったような顔をすると、
「いつの間に行っちゃったんだろ……。
どうする? 探す?」
夕は頬を掻き、迷うように入り口の
看板を見つめた後、困ったような眼を
桃花に向けた。
苦笑に近い笑みを浮かべる。
「別にいいと思うぞ。あいつらなら大
丈夫だろうし。……たぶんな」
小声で付け加えた理由は、猛獣を放
り出しているようなものだからだ。
夕の中で零は猛獣だ。なんなら化け
物でもいい。
その零の保護者が紫乃なのだ。猛獣
使いのようだと夕は密かに敬服してい
る。
けれど、その猛獣使いも安全ではな
い。
全面的に、紫乃は零の味方だ。しか
し、その行動自体を諌めるようなこと
はしない。
零の社会からは決して褒められたこ
とではない行動を、紫乃は黙って見て
いることもあれば、一緒になってやる
こともある。
「それに、歩いてるうちに見つかるか
もしんないしさ」
「そうだね。私たちは私たちで楽しも
っか!」
園内に入ると、桃花は感嘆の声を上
げた。
さまざまな乗り物があり、大勢の人
が楽しげに笑いながら歩いている。
親子連れもいれば、恋人に友人もい
る。