第9章 第8章 遊園地
必死の頼みに零は先ほどより大きく
舌打ちすると、小さく頷いた。
桃花はぱあっと顔を輝かせ、零に抱
きつく。
「ありがとう! じゃあ、1回家に帰
ってから零の家に行きたいからあとで
住所送っといて」
零の眉がピクリと動く。なんでおま
えがこっちの家に来るんだと疑問に思
ったが口に出さない。
だるそうにスマホを取り出すと、家
の住所を送る。
届いたLINEを確認し、桃花はありが
とうとお礼を言った。
1度自宅に戻ってから、零の家向か
った桃花は目の前の一軒家を見て、ぽ
かんとした。
大きな家だった。豪邸というほどで
はないが、普通の一軒家よりは大きい
分類にはいるだろう。
中に入り、靴を脱ぐ。いくつかの部
屋が並んだ廊下を歩いて少しわくわく
しながらリビングへと向かう。
しかし桃花はリビングを見て、言葉
を失った。
有り体にいえば、がっかりした。
リビングはほとんど何もなかった。
黒い長椅子と硝子机だけが置かれて
いる。
キッチンに行き、無礼も承知で冷蔵
庫を開けた。
物の見事に食材と呼べる物が入って
いない。アイスと炭酸飲料ぐらいだ。
調理器具にいたっては包丁しか置い
てない。