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イチイ

第8章 第7章 接触


「しねえよ! 犯罪者じゃないか!」
 
「ストーカーとかしたらだめだよ?」
 
「人を勝手にストーカーにするな」
 
「昴くんは無自覚のストーカーなのか
な? 気をつけないとだめだよ?」
 
「あれ、おかしいな。日本語がまった
く通じない」
 
 たわいもない会話もしているうちに
謎の胸の痛みも不安も恐怖も霧散して
いた。
 
 まるで、昴の声が心の安定剤のよう
だ。とても心が落ち着く。
 
「ね、ね、昴くん。1回しか言わない
からよく聞いてくれる?」
 
「ん? ああ」
 
 桃花はスマホを持ち変えると短く息
を吸った。
 
 囁くように言った。
 
「───大好き」
 
 歩いてるうちに駅の近くまで来た。
歩いても帰れるが電車のほうが早い。
 
 電話の向こうの昴はしばらく無言だ
ったがやがて深く息を吐く音がした。
 
「おま、もう……ほんと……勘弁して
くれ……」
 
 意味がわからなくて見えないとわか
っていても首を傾げた。
 
「ひとつ訊く。おまえ他の奴にもそう
ななのか?」
 
「どういう意味?」
 
「だから、やたらめったら男に好きと
か言ってるのかって」
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