第8章 第7章 接触
桃花はスマホを取り出した。
昴の家に戻って抱きつくことができ
ないのなら、せめて声を聞こう。
昴に電話をかけると、さほど待たず
に通話に切り替わった。
「もしもし? どうした忘れ物か?」
ほっと息を吐いた。
「ううん。なんか昴くんの声が聞きな
くなって」
電話口の向こうで激しくむせる音が
した。
何かを落とす音と、昴の咳も聞こえ
る。
「ど、どうしたの?」
「い、いや、なんでもない。ちょっと
飲物こぼしただけだ」
昴の声は少し息切れしていた。
自分はそんなに動揺させるようなこ
とを言った覚えはないが純粋な昴なら
仕方ないのかもしれない。
「昴くんって女の子に『あんたってい
い奴だね』とか言われただけで勘違い
とかしないか不安になるよ」
声を聞きたくて、と言っただけでこ
んななのだ。
ありえなくはない。これも童貞のせ
いなのだろうか。
「いや、さすがにそのくらいじゃ勘違
いしないぞ……」
「え、ほんとに? あ、こいつは俺が
好きなんだな! 彼女にしてほしいん
だな! よし、俺がきみを24時間警
備してあげよう! とか考えたりしな
い?」