第8章 第7章 接触
謎の胸の痛みは昴と知り合ってから
時々起こるようになっていた。
ほとんどは昴が自分以外の誰かと仲
良くじゃれている時だ。
(でも、男といる昴くんは痛くならな
いんだよね……)
胸の痛みが発生するのは昴が女とい
る時だけだ。
(なんなんだろ……。変な感じ)
謎の胸の痛みの他にも昴と会ってか
ら不思議な夢を見ることがあった。
それは酷く不明瞭で、よくわからな
い夢だ。
(昴くんと会えたのは嬉しいけど、な
んか恐くなるなあ……。
でも、何が恐いのかわからないや)
入り交じった不安と恐怖になんだが
涙を感じだ。
桃花は立ち止まると後ろを振り返っ
た。
昴の家はもう他の家の陰になっても
う見えない。
けれど、ここを真っ直ぐ戻れば昴の
家に着く。そんなに遠くない。
一瞬、足がそちらに動いた。今すぐ
この道を駆け戻り、昴に抱きつきたい
衝動に駆られる。
しかし苦悩の末、やめた。正直、今
昴の家に戻ったら帰る自信がなくなっ
てしまう。
無断外泊は親から固く禁止されてい
る。諦めて帰るしかない。
それでもひとりでいるのがどうしよ
うもなく不安だ。