第8章 第7章 接触
この上ないほどの興奮に浸かってい
た男だが、ある日ひとりの娘によって
殺された。
その娘は男の兄の婚約者だった。村
をあげての結婚式まで僅か1月という
時に最愛の彼を殺された。
その憎しみは到底計り知れなるもの
ではなかったが、娘は強靭な精神でそ
れを隠し、男に擦り寄った。
若く美人な娘に男はすぐに心を奪わ
れた。それまでは知らなかった女の身
体を知った。
娘の復讐心は相当なものだったのだ
ろう。憎き相手と身体を重ねることす
ら厭わなかったのだ。
機が熟すまで待ち続け、男を殺した。
そうして復讐を終えた娘はひとりの
子どもを生み、自らの命を絶って、愛
する人の元へ逝ったという話だ。
その子どもは愛する男との間の子ど
もではなく、憎い男の血の混じった悲
劇の子どもである。
この授業の目的は、今は一般市民と
の共存ができている。
だが、神と崇められたり、迫害を受
けたりした過去がある。
今は平穏でも、いつ一般市民が自分
たちに武器を向けるかわからない。
力を持たない者にとって自分たちは
脅威に変わりはない。
この話のようなことが起きないとは
限らない。
一般人を信用するなとは言わない。
彼らは無力なのだから。けれど完全に
心を許してもならない。
何故なら彼らは敵でも味方でもない。