第8章 第7章 接触
まるで奴隷のようだが、誰もそれを
疑問に思わない。
魔力持ちこそが神である。そんな思
考主義の村で事件が起きた。
その男は唯一ただの人間として生ま
れた。
彼の両親も、兄も祖父や祖母も魔力
持ちの中、彼だけが力を持たずに生ま
れた。
男は、自分だけが魔力持ちではない
といことに劣等感を覚えていた。
滅多に人前に出ることは許されず、
肉親にすら侮蔑の眼で見られる毎日。
劣等感はやがて怒りに変わり、ある
日男は家族を皆殺しにした。
そうして死体となった家族の血を1
滴も残らず飲み干し、男は魔力持ちに
成り代わった。
それを知った村は一転して男を敬う
ようになった。
それまでは嘲笑と侮蔑を向けていた
のに、男が魔力持ちとなったと同時に
かつての魔力持ちが死んだのに、村は
なんの疑問も抱かなかった。
村にとっては、どんな経緯があるに
せよ、魔力持ちということだけが重要
だったのだ。
男を見かけるたびに指を指し笑い、
石を投げては泥水を吸わせていた。
なのにそのことはなかったことのよ
うに、昔からそうしていたように跪き
敬意の眼差しを向ける。
なんとも都合のいいことだったが、
男はそんなこと気にしなかった。
これからは、自分が神だ。自分の言
葉に誰も逆らわない。