第8章 第7章 接触
1点の曇りもない瞳から逃れようと
したが、桃花がさせない。
さらに顔を近づけて、昴の手を取っ
た。
昴の手に比べたら小さな手だ。その
両手で昴の右手を包み込んでいる。
「本当に、昴くんと知り合えて嬉しい
よ。最初は怪しい人だと思ってたけど
ね」
桃花は初めて昴と会った日のことを
思い出していた。
一般市民のはずなのに、魔力の扉を
認知した。
桃花にとってはそれだけで怪しさ抜
群で、警戒するに越したことはなかっ
た。
魔力持ちには、同じ魔力持ちがわか
る。
本人がそれを隠そうとしても、同種
からしたら、魔力のオーラが微小なれ
どわかるのだ。
昴はどう眼を凝らしても非魔力持ち
だった。
これは一般市民じゃないとそう思っ
た。実際、一般市民は一般市民でも特
別な一般市民だった。
桃花はあのとき、学園に入学して初
めに受けた総合授業を思い出していた。
遠い昔、その時代では魔力持ちは一
般人からは畏敬の念を抱かれていた、
とある村の話だ。
非力な人たちにとって、人知を超え
た力を使う彼らは頭を垂れ、敬うべき
存在だった。
彼らの言うことは絶対で、いかなる
抵抗も許されない。