第8章 第7章 接触
よくこんなところで生活できる。い
くらなんでも安い物件ならこれよりマ
シなところはあったはずだ。
驚きは呆れに変わり、呆れも感心に
変わった。
自分ならこんなところで生活なんて
できない。
虫や鼠ならまだ耐えれたかもしれな
いが、それも3日が限界だろう。
こんな家では防犯性など皆無だ。安
心して眠れやしない。
「よくこんな家……」
「家賃が安かったからなあ」
それにしたって限度がある。
ひとり暮らしを始めようとしてる高
校生にとって、安家賃は魅力的だ。
それは、わかる。
「だからって……安全性とか無視です
か……」
呆れのあまり敬語である。
「そのときは念頭になかったな。住ん
でから気づいた」
あまりの馬鹿に桃花はもう何も言え
なくなった。
がっくりと肩を落として、とりあえ
ず中に入ろうと昴を促す。
昴は鍵を開けると、ドアを開けて、
狭い玄関に桃花を招き入れた。
靴を脱ぎ、おじゃましますと言いな
がら、桃花は居間に向かう。入ってす
ぐなのですぐにわかった。
ぼろぼろの外装の割には中は綺麗な
ほうだった。