第2章 第1章 戦闘員出動
「見えてた? 何が?」
怪訝そうな顔で訊いてきた夕に軽く
溜息をついて、零は空を指す。
「空? クルーン? それともあのハン
マーか?」
零は頷く。いや、どっちだよと夕が
呆れた。
「クルーン?」
首を振る。
「ハンマー?」
頷く。ハンマーのようだ。
「言われみれば……不思議だな」
魔力のない一般市民、生徒はクルー
ンが姿を完全に現すまでそれを認識で
きない。
クルーンは現れる前に門を造る。魔
力で造られているので視覚などできな
いのだ。
にもかかわらず男子生徒はそれを視
覚していた。
空からハンマーが完全に姿を現す前
からだ。
桃花は男子生徒から離れると夕の後
ろに隠れた。
「……怪しくない?」
「えっ? いや、俺ただの一般市民!
普通見えないのか、あれ?」
男子生徒は慌てて弁解するように早
口で言う。
「見えないから、怪しいんだよ。夕、
どうする?」
「おれに訊くなよ……」