• テキストサイズ

イチイ

第8章 第7章 接触


 開けた窓から吹く風が桃花の髪を揺
らす。そっと髪を撫でつけた。
 
 桃花は窓の燦を握り締め、春の風を
感じる。
 
「もうわかんないよ……」
 
 
 昴はぽかんとして目の前の人を見上
げていた。
 
 にこにこと人当たりのいい笑みを浮
かべる白い肌を縁取る漆黒の髪が腰の
上を流れて風に靡いている。
 
 宝石のように輝いている青い眼は好
奇心に満ちている。
 
 服装は上から下まで黒一色だった。
身体のラインが微妙にわかりずらい。
 
 顔を見ても、体格を見ても性別の区
別がつけずらい。
 
 いきなりだった。さぼり場のひとつ
である公園のベンチでだらけていると
突然声をかけられた。
 
 顔を上げるととても綺麗な顔をした
人が立っていたのだ。
 
「え、えっと……?」
 
「きみ、ゲリエ学園の生徒だよね。知
り合いがそこに通ってるんだ」
 
 そう言って昴の横に座る。
 
「ぼくはルシェリ。きみの名前を教え
てくれる?」
 
「え、あ……朝比奈昴」
 
 初対面で名前を訊かれたのに、昴は
全く警戒心を感じてなかった。
 
「朝比奈昴……昴……いい名前だね」
 
 ルシェリはにこりと笑う。
/ 180ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp