第8章 第7章 接触
小さな背中を眺めながら桃花は考え
る。
さっきの彼を見たとき、普段零とい
る時や時々リーシアと会う時に感じる
何かがあった。
それが何かはわからない。
そういえば昴の時もあった。初めて
あった時はなかったが、家まで送って
もらったあの日。
普段零やリーシアから感じるそれと
は違ってやはり正体は掴めずも、強い
何かを感じた。
桃花は唇を噛んでぎゅっと胸元を握
りしめた。
昴に抱く、どこか懐かしい感情。ふ
わふわとした、この感覚。
私が護りたい。そう思うと同時に護
ってほしいと思う。
あの頃のように───。
桃花はそこではっとした。歩く速度
を緩めながら『あの頃』とはいつのこ
とか疑問に思う。
自分と昴は知り合ってから1ヶ月も
経っていない。過去に会った記憶はな
い。
じゃあ、なぜ? なぜあの頃のよう
にと願うのだろうか。
いつかも分からない『あの頃』をな
ぜ……。
桃花はいつの間にか足を止めてしま
っていた。
考えてもわからない。けれど、思い
出したいと思う。
(違う。思い出したくない。思い出し
たいよ、けど……だめだ)