Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第9章 止まった時間
どうやって家に戻ってきたのか、覚えていなかった。
気づけば、ライナー・ブラウンはあの小さなベッドの上にいた。
体を縮こませ、丸くなって。
本来ならば、買い換えられているはずの寝台で。
この家に戻るたびに感じる違和感。自分の成長に、母は興味を持っていなかった。だから、彼の体が大きくなっても、ベッドは変わらなかった。
天井を見つめる。
呼吸を整えるように、深いため息をついた。
(何も変わっていない……)
——いや、違う。
自分は変わってしまった。
記憶が戻ってしまった。
喪失感は、埋めようがないほど深く沈殿していた。
ライナーは20歳になろうとしていた。
そして気づけば、彼女の享年に近づきつつあった。
(ヒルドル……)
もうこの世にいない人。
忘れていた時間は、何だったのか。思い出した今、自分は何をすべきなのか。
答えは出ないまま、日々は過ぎていく。