Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第10章 天と地の時間
アルミンの爆発によって終尾の巨人は吹き飛び、ついに地ならしが止まった。
瓦礫が崩れ、衝撃波が周囲に広がる中、ライナー・ブラウンとヒルドル・メニヤは、崩れ落ちた大地の上に倒れていた。
(……生きている?)
かろうじて爆風を耐えたものの、全身が痛みで悲鳴を上げている。
「……終わったんですか?」
ヒルドルが苦しげに息をつきながら呟く。
ライナーは立ち上がり、周囲を見回した。しかしあの寄生虫はまだ生きている。あれをつぶさなければ悲劇は終わらない。
ヒルドルが目を凝らすとライナーの仲間たちが鳥のような巨人に乗って高台に降りる姿が見える。
次々と、避難民たちが 無垢の巨人へと変貌していった。
アニの義父が巨人化し、ガビの両親が巨人化し、次々と 人間だったはずのものが「怪物」に変わる。
「いや……いやだ……!!!」
ガビが涙を流しながら、巨人となった家族たちを見上げる。
ライナーは 膝をついた。
ここまで戦って、生き残って、ようやく終わりが見えたはずなのに——。
また、すべてを奪われるのか。
(こんなの……こんなの、耐えられるわけがない……!!)
その時——
「立ちなさい、ライナー・ブラウン!!」
轟くような大音声が、戦場を貫いた。
ライナーが顔を上げると、そこにいたのは ヒルドル・メニヤ。
歴代最弱の鎧を継いだはずの彼女は、この場で 最も強かった。
「お前の絶望は、私が幾らでも引き受ける……!!」
ヒルドルの巨人が、寄生虫に向かって構えを取る。
「だから——立って、戦いなさい!!!」
ライナーは、歯を食いしばった。
(そうだ……俺は、まだ……!)
鎧の巨人が、再び立ち上がる。
「ヒルドル!!」
「合わせなさい!!」
同時に駆け出す。
目の前には、エレン・イェーガーの首へと伸びようとする寄生虫。
そして、その前に 身を守るための兵士として使役された無垢の巨人たち。
ライナーの母も、ガビの家族も、みんな含まれていた。
それでも——彼らは戦うしかなかった。