Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第8章 過ぎ去った時間
薄暗い会議室に、上層部マーレ人兵士の重々しい声が響く。
「そして最後のひとつ、鎧の巨人の継承者は——ライナー・ブラウンに決定した」
一瞬の沈黙の後、候補生たちの間に微妙な空気が流れた。歓声を上げる者はいない。ポルコ・ガリアードが悔しげに歯を食いしばる音だけが聞こえた。
しかし、ライナーの胸は高鳴っていた。ついに、自分は選ばれたのだ。あの鎧の巨人を継承するのだ。
報告を受けたヒルドルは、静かに目を細めた。
「お前はよく頑張りましたからね」
優しく労う声に、ライナーは嬉しそうに顔を上げる。
「長官が、俺を後押ししてくださったんですよね?」
目をきらきらと輝かせ、ヒルドルを見つめる。彼は何も知らない。ただ、自分が認められたことに喜びを感じているだけだった。
ヒルドルは一瞬だけ目を伏せ、穏やかな微笑を浮かべる。
「……そう思うのなら、そうなのでしょうね」
それがどういう意味なのか、ライナーは深く考えなかった。
「俺、頑張ります! 必ず島の悪魔どもを根絶やしにして、最高の戦果を持ち帰ります!」
決意に満ちた声だった。純粋で、迷いのない言葉。
ヒルドルは静かに頷く。
「期待していますよ、ライナー・ブラウン」
「はい!」
その未来に、何が待っているのかも知らずに——。