Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第8章 過ぎ去った時間
それからというもの、ライナー・ブラウンは以前にも増して訓練に励むようになった。
朝から晩まで、誰よりも遅くまで残り、誰よりも汗を流した。
「ライナー、もう少し踏み込みを意識しなさい。そうすれば、もっと鋭く投げられるはずです」
ヒルドルの指導のもと、彼はひたすら自分を鍛え続けた。
そして、気づけば彼の体は成長期を迎え、日に日にがっしりとしていった。腕は太く、肩幅は広く、かつて「落ちこぼれ」と言われた体は、戦士らしい逞しさを手に入れつつあった。
そしてある日——
「……はっ!」
彼女の襟を掴み、彼の体が低く沈む。瞬間、今まで幾度となく投げ飛ばされてきた技を、逆に彼女へと仕掛けた。
視界が揺れる。
「……ッ!」
ヒルドルの背中が、砂の上に叩きつけられた。
静寂が訪れる。
ライナーは荒い息をつきながら、目の前に倒れた彼女を見下ろした。今までなら、どれだけ全力を尽くしても、ヒルドルに投げられるばかりだった。しかし今——確かに、彼は勝ったのだ。
「……ふっ」
横たわったまま、女が微かに笑う。
「立派になりましたね、お前は」
その言葉に、ライナーは微笑むことができなかった。
(俺が強くなったのか、それともこの人が弱くなったのか……?)
胸の奥に、得体の知れない違和感が広がっていた。