Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第8章 過ぎ去った時間
轟音が響き渡る。爆風が大地を揺らし、砲煙が空を黒く染める。ライナー・ブラウンは砂まみれになりながら、必死に砲弾を抱え込んでいた。
「急げ、新しい砲弾を車力へ!」
怒号が飛び交う中、彼は装填のために前へ進む。砲弾を詰め込もうとした瞬間、遠くで爆発が起こり、その衝撃でバランスを崩した。
「うわっ……!」
地面に倒れ込み、視界が一瞬ぐらつく。砲弾が手から転がり落ちた。
「立ちなさい、ライナー・ブラウン。グズグズするな!」
スピーカー越しに響く厳しい声。ライナーの背筋が跳ねる。
「は、はいっ!」
慌てて砲弾を拾い上げ、再び車力の巨人の背へと詰め込む。中年の男性の顔つき体つきをした巨人が、その巨体を震わせながら前線へ向かっていくのを見送る間もなく、新たな砲撃音が響いた。
戦場の空気に飲まれる。足元の血と鉄の臭い、仲間の叫び、敵の銃撃音——頭が混乱しそうだった。だが、その時。
「全兵、撤収せよ」
スピーカーから撤収の合図が響く。
「撤収だ! 走れ!」
ライナーは転がるように駆け出した。地面が爆風で弾け、土が舞い上がる。恐怖を押し殺しながら、仲間たちとともに軍用機へと飛び込んだ。
ハッチが閉じる。飛行機が揺れながら上昇していく。
「ふぅ……」
座り込む間もなく、スピーカーからヒルドルの事務的なアナウンスが響く。
「戦士たちは負傷者の確認を行いなさい。各員、状況報告を」
無機質な声が耳に入る。ライナーは息を整えながら、ぼんやりと窓の外を見た。
その時——誰かが叫んだ。
「鎧の巨人だ!」
ライナーの心臓が跳ねる。
「なに……?」
彼も窓へ駆け寄った。見下ろすと、ちょうど翼の下、大地へと飛び降りる細身の巨体があった。
鎧の巨人——しかし、その動きは、彼が知るそれとは違った。重厚な巨体でありながら、しなやかで、無駄のない戦い方をしている。敵陣へ滑り込み、鋭い体術で前線を押し上げていく。
(あの戦い方……どこかで……)
見覚えがある。だが、それが誰なのかは思い出せなかった。
ただ——心の奥に、確かな衝動が湧き上がる。
鎧の巨人を、継承したい。
ライナーは固く拳を握りしめた。