Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第7章 すれ違った時間
フラッシュバックが、彼を襲った。
モザイクのように歪んだ顔。
なのに、思い出の数々が溢れ出す。
——血反吐を吐くほど、しごかれた特別訓練。
——長官室で、事務仕事までさせられたこと。
——泣いたことも、何度もあった。でも、その厳しさの中には確かに温かさがあった。
手を引かれる感触。
市場の喧騒。
焼きたてのパンの香り。
(それが、俺がずっと会いたかったアンタなのか……?)
ライナーは額を押さえ、机に手を突いた。
頭の奥で、何かが軋む音がする。
だが——顔だけが、どうしても思い出せない。