• テキストサイズ

Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)

第7章 すれ違った時間


 ライナー・ブラウンは、再び名誉マーレ人統括長官の執務室へと足を運んでいた。
 違和感が消えない。
 何かが、胸の奥でざわめいている。

 「ライナー・ブラウン、また来たのですね」

 長官は穏やかに迎え入れた。彼女は軍服の襟元を整えながら、椅子を勧める。

 「どうぞ、お掛けください」

 ライナーは勧められるままに腰を下ろしたが、落ち着かない様子で拳を握り込んだ。

 「すみません、急に……でも、話がしたくて」
 「構いませんよ」

 長官は静かに微笑んだ。
 ライナーは唇を噛む。

 「俺……何かを忘れてる気がするんです」

 長官はじっとライナーを見つめていた。

 「出立前のことが、ぼんやりしているんです。俺がマーレにいた頃の長官は……あなたではなかった。でも、じゃあ誰だったのかと考えると、何も思い出せない」

 拳を握る手が、わずかに震えた。

 「思い出すのが怖いんです。でも……でも、思い出したい」

 静寂が流れる。
 やがて、長官は小さく頷き、一つ一つ確かめるように言葉を紡ぎ始めた。

 「……ヒルドル・メニヤ」

 ライナーは小さく息を呑む。

 「彼女は、私の前任の長官でした」

 長官の静かな声が、ライナーの意識に波紋を広げていく。

 「そして、彼女は戦士長でもありました」
 (戦士長……?)

 確かに聞き覚えのある言葉だ。だが、具体的な記憶は浮かばない。

 「さらに……彼女は、鎧の巨人の継承者だったのです」

 視界が揺れた。

 「……嘘だ」

 ライナーの声は、震えていた。

 「最初から、あなたを鎧の継承者として期待していました」

 心臓が強く脈打つ。鼓動が速くなる。

 「そして、鎧を託すために──」

 長官は言葉を選ぶように間を置き、ゆっくりと続けた。

 「……既に、命を落としています」
/ 48ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp