Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第6章 すれ違う時間
ライナーとベルトルトは、ジークの先導で名誉マーレ人統括長官のもとへ向かう。
「よく戻りましたね、戦士たちよ」
長官室に入ると、そこにいたのは軍服をきっちりと着こなした一人の女性だった。
(……誰だ?)
ライナーは瞬間的に違和感を覚えた。
無意識のうちに、彼は口を開く。
「失礼ですが、長官。最近就任されましたか。つまり、俺たちが島へ発ってから」
長官は微かに眉を上げたが、落ち着いた声で答えた。
「いいえ、私が就任したのはあなた方が出立する直前です」
ライナーは考え込んだ。
出立する直前? そんなはずはない。
自分がマーレにいた頃に長官が交代した記憶はない。
では、その時の長官は誰だった?
——思い出せない。
頭の奥に靄がかかったような感覚が広がる。今目の前にいるこの人では無いのは確かなのに。
誰かがいたはずなのに、顔も、声も、何も思い出せない。
ただ、胸の奥に妙なざわめきが残った。
「……そうでしたか」
言葉を絞り出し、ライナーはそれ以上問い詰めることなく、報告を続けた。