Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第6章 すれ違う時間
久しぶりのマーレは記憶のそれとそう違いはない。でも、壁の中と比べればあまりにも大きな文明の差を感じる。
あまりに過酷な戦いの連続の後、命がけでマーレまで戻ってきたライナー達は出迎えの兵士達に連れられて兵舎へとやってきた。
見上げるほど大きなレンガ造りの建物はどこか懐かしく、とはいえいい思い出があるわけでもなく背筋が伸びる思いがする。
「九つの巨人の継承以来だっけ」
ジークがそう問うた。ライナーは何も言わず頷く。常にマーレ軍と行動を共にしていたジークと違い、ライナー達は即座の出発だったから確かにこの兵舎での思い出は多くない。
「いや、そんなはずはないけど」
その感想に彼は首を横に振った。
「ライナーは一時ずっと兵舎に入り浸ってただろう、思い出がないだなんてそんな馬鹿な話が」
と、そこまで喋った所で彼はふと言葉を止める。そして、ああという溜息を吐いて何か納得した様子だった。
「なるほど。忘れることにしたわけだ」