第8章 真実
ニノの背中を見送り、ベッドの端に座り翔くんに向き直る。
「智くん…ごめん、俺…」
止まってた涙が溢れ出した。
「なんで翔くんが謝るの?ニノと一緒で謝るのは俺だよ?」
「違う!俺が智くんの人生を狂わせたからっ!」
「人生を狂わせた?どこが?俺、翔くんに何もされてないよ?」
「したよ…だって智くん言ったじゃん
『やり直せたらいいのに』って、『そしたら同じ間違いしないのに』って…
俺との事、後悔したんでしょ?
男なんて抱いたから…俺が智くんの人生に傷を付けた」
翔くんが苦しそうな表情で話をする…
やっぱり俺が全部悪かったんじゃん。
翔くんにそんな風に思わせてしまった…
俺の一言が翔くんを苦しめたんだ。
そこに追い討ちを掛けるように、俺は翔くんに『忘れて』と告げて
記憶をなくすほどのショックを与えてしまった。
それなのに、こんなどうしようもない俺のことをまた好きになってくれて…
そんな君に俺からしてあげられることは、もうひとつしかない。
「翔くん、違うんだ…
俺が間違えたのは、翔くんを抱いたことじゃない…
自分の気持ちに気づかなかった事なんだよ…」
「気持ちに気付かない?
智くん、大切な人がいるって…
それと関係あるの?」
「あるよ…俺が自分の気持ちに気付いて、あの日にちゃんと伝えていられてれば
俺たちはずっと幸せでいられたのに」
俺の正直な気持ちを伝えるよ…
ずっとそんな資格はないと思ってたけど
傷つき苦しんでる君を救える方法は、これしかないと思うから…
「翔くん…好きだよ
きっとずっと前から好きだったんだ…
だからあの日君を抱くことが出来た
その事に気が付いたのは、君が俺から離れていってからだった…
だから、気付くのが遅かった俺が全部悪い」
翔くんの目が見開いた。
「嘘でしょ?そんなはずない…
智くん何人も彼女いたじゃん」
「いたよ?でも皆すぐに別れた…
別に好きじゃなかったし、別れても翔くんがいてくれるからって思ってた…
その時点で気付くべきだったんだ
俺が必要としてたのは、翔くんの体だけじゃないって事に」