第8章 真実
泣き続ける翔さんが苦しそうで、落ち着かせようと背中をゆっくりと擦った。
「翔さん…翔さんがどう思ってるのかはわからないけど
俺も、恐らく大野さんも、翔さんのこと責めてないよ?
それどころか、謝るのは俺なんだよ…」
翔さんが顔をあげ俺の顔をじっと見る。
「なんでニノが謝るの?
ニノは俺の事助けようとしてくれたてたのに…
俺は、そのニノの事、裏切ったんだよ?」
「裏切ってなんかないよ。言ったでしょ?
俺たちは最初から付き合ってなかったって」
翔さんに向かって微笑むと翔さんはまた首を横に振った。
「違うよ…付き合ってなくても、ニノはずっと俺の側に居てくれてた…
だから俺がニノに抱かれるのを望んだ時点で、ニノの気持ちに応えたも同然なんだ…
俺も、そのつもりで抱かれたから、記憶をなくして目覚めた時、ニノと付き合ってると思ってたんだよ」
「それでもね?翔さんに、ちゃんと事実を話さなかったのは俺が悪い…
俺が狡いから。やっと手に入れた翔さんを大野さんに渡したくなかった」
「ニノは悪くないよ…俺が馬鹿だから
折角、智くんから離れるために記憶無くしたのに
同じこと繰り返して…
ニノのこと裏切って傷つけた」
「裏切ってなんかないって…翔さん、ちゃんと話してくれたじゃん
これが影でコソコソされたら裏切りだけど、翔さんは本心を伝えてくれたでしょ?
俺はやっぱり大野さんには勝てないんだなぁって、ちょっと残念だったけど…それだけの事だよ」
「でも…」
「もういいから…前にも言ったでしょ?
俺は短い間でも、翔さんと一緒に居られて幸せだった…翔さんの事恨んでなんてないから…
それにね、もう1つ謝らなきゃいけない事があるんだけど、それは後で謝るね?
今、言うべき事ではないと思うから」
俺が犯した最も重大な罪…大野さんの気持ちが変わったときに邪魔した事。
でも、それを今俺から伝えてしまう訳にはいかない…
それは大野さんが翔さんに気持ちを伝えた後に謝るよ。
「俺、皆に翔さんの意識と記憶が戻ったこと伝えてくるから
今日はもうゆっくり休んで…
あとは大野さん、よろしくね」
「ありがと、ニノ…」
短いけれど、翔さんの想いの詰まった感謝の言葉を聞いて俺は部屋を後にした。