第8章 真実
部屋の奥に戻り、大野さんと共にソファーに座った。
「大野さんと話し合いをして、大野さんと付き合う事になったのだとばかり…」
「そんなこと出来る訳ないだろ…
翔くんに、あんな酷いことしてたのに」
苦笑いをする大野さん。
「でも大野さん、翔さんが離れていって、後悔しましたよね?
翔さんに対する気持ちが変わったんじゃないですか?」
「…変わったよ…それでも俺がしてきた事は許される事じゃない…
翔くんが記憶をなくしたのだって、俺のせいかもしれないし…」
大野さんが苦しそうに顔を歪めた。
「どういう事です?」
「『忘れて』って言ったんだ…翔くんに」
「何を?何を忘れさせたかったんですか?」
「俺との関係…俺との事を忘れて、ニノと幸せになって貰いたかった」
それって俺が翔さんを奪ったから?
大野さんは、翔さんの事を思って大野さんとの過去を忘れさせたかった?
そして大野さんのその言葉を聞いて、翔さんは本当に大野さんを忘れたの?
翔さんは大野さんの望みを叶えるために、自ら記憶を失った?
そんな事可能なのか?
それほど、翔さんにとって、大野さんの存在は大切ってことか…
「…うっ…」
翔さんの呻き声が聞こえ、ベットに寝ている翔さんを振り返って見た。
「翔くん?」
大野さんがベット脇に移動して、小さな声で呼び掛ける。
「…ご、め……さと…く…」
翔さんの目尻から涙が流れた。
まだ目は覚めてないようだ。
翔さんの涙を指で拭う大野さん…
そのまま翔さんの頬に手を添えた。
「ごめん、翔くん…俺のせいで君をこんなに苦しめて…」
翔さんを見詰める大野さんの頬を、一筋の涙が伝った。
俺が大野さんの気持ちの変化に気がついた時に、翔さんを渡していたら…
ふたりがこんなに傷つくことはなかったのに…
俺が変な意地を張ったから…