第7章 決意
「俺から抱いてって言ったの?」
「うん、それは嘘じゃないよ?
無理矢理襲った訳じゃないからね?」
「いや、そこは疑ってないけど…
なんで付き合ってないのに俺、ニノに抱いてなんて頼んだの?」
「ごめんね、それは俺にも良くわからないんだ…
ただそうしてあげないと翔さんが辛そうだったから」
翔さんは俺のその言葉を聞いて表情を歪めた。
「…ううん、なんとなくわかったよ
なんでニノにそんな事頼んだのか…」
翔さんはいきなり上体を思いっきり前に倒した。
「ごめん!ニノ!俺、本当に最低なことした…」
「翔さん、止めてよ」
俺は翔さんの肩に手を置き、体を起こそうとしたけど、翔さんは力を入れてそれを拒否した。
「俺、多分ニノの事利用したんだ…」
「いいんだよ。俺は最初から翔さんを救いたかっただけなんだから」
「…やっぱりそうだったんだ…」
翔さんの声のトーンが落ちた…
「ねぇ翔さん、自分を責めないで?
俺は全てを知っていて、勝手にしたことなんだよ?」
翔さんは体を起こして、驚いた様に俺を見た。
「知ってた?ニノは知ってたの?
俺が智くんを好きだったことも…全部知ってて側にいてくれたの?」
「正確には全てではない…途中まではわかってる。
だからなんで翔さんが俺に抱かれる事を望んだのかはわからない…
恐らく、それが翔さんが記憶を無くした原因なんだとは思うけど…」
「そっか…でも、それは知らなくていいんだ…
ニノが全てを知ってて、それでも一緒にいてくれたことに吃驚しただけだから」
「記憶を無くした原因は知らなくていいの?」
「うん、いい…過去は思い出さないって約束したから」
「約束?誰と?」
「…ごめん、これ以上は聞かないで」
そうは言うけど、そんな約束をするのは大野さんくらいだろう。
ふたりの間でどんな話し合いがされたのかわからないけど、俺と別れるという事は上手くいったってことだよな。
だったら聞く必要もないか。