第7章 決意
先に家に帰り着き、翔さんが来るのを待った。
翔さんの事だから悩んだんだろうなぁ…
俺の事をフラなきゃいけないんだから…
しかも、自分は他の人と幸せになろうとしてる。
翔さんが楽屋で言った言葉…『優しくして貰えるような人間じゃない』
それを聞いただけで、翔さんがどれだけ自分を責めているのかわかったよ。
でもさ、俺も翔さんの弱ってる時に攻めたり、記憶を無くした翔さんに真実を告げなかったり、結構狡いことしてるんだよ?
短い間ではあったけど、翔さんと付き合えて嬉しかったし、綺麗な翔さんも見られた…
ずっと耳に残っていた、翔さんの甘い声も聞けた。
唯一の心残りは、あの艶かしい声で俺の名前を呼んでくれなかったこと…
甘い声では呼んでくれたよ?
でもさ、やっぱりあの声を出させる事が出来るのは、大野さんだけなんだね…
心も体も満たされた瞬間だけに発せられる声…
一度でも聞くことが出来ていたら…俺の名前を呼んでくれていたら…
俺は翔さんを手放せなくなっていたかもしれない。
『ピンポーン』
部屋にインターフォンの音が響いた…
貴方の為に俺が出来ること…
貴方に負い目を感じさせないように、俺の元から解放してあげること。
俺の事は気にしなくて大丈夫だから…
安心してあの人のところへ行っていいよ。