第7章 決意
翔さんが緊張した様子で俺に『家に行っていい?』なんて聞いてきた。
その様子を見てすぐにわかったよ…翔さんて、ほんと隠し事が下手だね?
何を話したいのかなんて聞かなくてもわかってる。
俺と別れたいんだよね?
そう仕向けたのは俺なんだけどさ…
最近、何かに悩んでた…
でも俺に相談できないんでしょ?って言うか誰にも相談出来る内容じゃないんでしょ?
だったらさ、当の本人たちで話してみてよ…答えが見つかるんじゃない?
確かにね、気に入らないよ?
散々、翔さんを傷つけてきた人に翔さんを渡すなんて。
でもさ、しょうがないじゃん。
悔しいけど、俺じゃ翔さんを幸せに出来ないんだもん…
それじゃ意味ないんだよ…
俺は翔さんが幸せになってくれる事を願っていたんだから。
翔さんを大野さんから奪って、愛情を注ぎ続ければ、俺の事を好きになってくれると思ってた。
翔さんが俺に抱かれることを望んだ時、正直勝ったと思ったんだ。
俺の気持ちが大野さんに勝ったんだと…翔さんが大野さんじゃなく、俺を選んでくれたんだと思った。
でも、違ったんだよな…
俺に抱かれて翔さんは記憶をなくした…
俺と付き合ってると思い込んだ。
それは翔さんが望んだ事なんだけど、きっと本心からじゃなかった。
だから、自己防衛で翔さんは記憶をなくしたんだ…
大野さん以外の男に抱かれた事で、翔さんの心が壊れないように。
そこまでしなくちゃいけなかった理由はわからない…でも、きっと大野さんの為なんだろう。
結局、翔さんは大野さんの為に自分を犠牲にするんだ…
そんな強い想いを俺が邪魔しても、翔さんを苦しめるだけだ。
それは俺が最もしたくないことだから…
だからね?貴方の口からハッキリ別れを告げられたら、俺は潔く貴方を手放すよ…