第6章 葛藤
好きだった人には幸せになって貰いたい、か…
確かにそうだよ、俺は翔くんに誰よりも幸せになって貰いたい。
でも、俺が幸せになるのはやっぱり無理だよ…
翔くん以外の人を好きになるなんて考えられないんだ。
だから『この先誰かを好きになる事はない』って言ったのに
翔くんに『ごめん』と謝らせてしまった。
翔くんは何も悪くないんだよ。
「翔くん俺ね、その人じゃなきゃ駄目って言うよりも
その人だから好きになったんだよ…
だからこの先、他の人を好きになることはないかなって思ったんだ」
「その人だから?」
「そう。俺さ、昔はあんまり人に興味が無いっていうか
まぁ、自分の事もだったんだろうけど…
相手がどう思ってるとか自分がどう見られてるとか全然気にしてなくて…
でもね、その人だけは最初から特別だったんだ…
なのに、その事すら自分で気がついてなくて…
それで、いっぱい傷つけちゃっんだ、その人の事…
で、とうとう俺から離れて行った…
それだけで済んでれば、まだ自業自得ですんだんだけどさ
離れても、その人は俺のせいで傷つき続けてるんだよ…
それがわかっているのに、俺は何もしてあげられないんだ」
こんな事、君に話すのは狡いのかな…
誰にも言えない俺の君への想い…
でも、この話を聞いて、君が俺を責めてくれたら…
『酷い奴だ』と罵ってくれたら…
少しは気持ちが楽になるのかも
君を傷つけ続けたのに、君は一度も俺を責めないから…
君が傷ついた分、君が俺を傷つけてくれ…そう思っていたのに…
突然、温かい温もりに包まれた…