第6章 葛藤
智くんに大切な人がいた…
そっか、だから俺フラれたんだ。
当たり前のことじゃん。智くん何も悪くないじゃん。
なのに俺の事心配してくれて…やっぱり優しすぎるよ智くんは。
でも上手くいかなかったんだね、その人と…
幸せになっちゃいけないなんて思うほど、後悔してるんだ…
「智くん…相手の人さぁ、智くんに幸せにならないでなんて思ってないと思うよ?」
智くんが俺の事をじっと見た。
「…なんでそう思うの?」
「ん~、どんな理由でふたりが上手くいかなかったかわからないけど
さっき智くんは、智くんがふたりの気持ちわかってればふたりで幸せになれた、って言ったでしょ?
それってさ、相手も智くんの事好きだったってことだよね?
俺だったらさ、例え想いが届かなかった人でも、好きだった人には幸せになって貰いたいから…
じゃないと、自分もいつまでたっても幸せになれない気がする」
そうだよ…自分のせいで好きな人が苦しむ姿なんて見たくない。
智くんが俺の顔を見つめたまま苦笑いした。
「それは困ったな…相手には幸せになって貰いたいけど、俺はこの先、誰かを好きになる事はないと思う」
そっか…智くんも俺と同じなんだ…
俺が智くん以外の人を好きになる事がないのと一緒で、智くんもその人以外じゃ駄目なんだ…
羨ましいな、その人…
智くんにそんな風に思ってもらえるなんて。
「ごめんね…智くん」
「どうして翔くんが謝るの?」
「だって…智くん、その人じゃないと駄目なんでしょ?
それなのに俺、簡単に『幸せになって貰いたい』なんて言っちゃったから…」
自分だって次の人なんて考えられないくせに…