第1章 後悔
その日から、ふたりの事を注意深く見るようになった。
翔さんが大野さんの事を好きなのは見ていてすぐにわかった。
でもあの切なそうな眼差しはなぜ?
なんでそんな悲しそうな目で大野さんを見ているの?ふたりは付き合っているんでしょ?
その眼差しの理由に気がつくのにそう時間は掛からなかった。
大野さんが翔さんを見る眼差しは、恋人を見る眼差しとは違う。
隣に並んでいる姿は良く見るのに…
どういうこと?元々感情の出にくい大野さんだからわかりづらいだけ?
暫くふたりの観察が続き、たまにふたりが会っていることはなんとなく分かってきた。
それでも、大野さんから翔さんに対して愛情を感じることはなくて、堪らず翔さんに声を掛けた。
「翔さん、飲みに行きませんか?」
「ニノからなんて珍しいね…いいよ、行こう」
翔さんが予約してくれたのは、個室のある店。
翔さんならそうしてくれると思った。
「「カンパーイ!」」
ふたりでジョッキに入ったビールを流し込む。
「はぁ~、旨い!」
「ニノから誘ってくれるなんて珍しいね?よっぽど飲みたかったの?」
「う~ん、それもありますけど、翔さんに聞きたいことがあって…」
「聞きたいこと?わざわざ飲みに誘ってまで?」
翔さんが首を傾げる。
「ええ、まぁ、他の人には聞かれたくないかなぁ、って思いまして」
「え~、なんか怖いなぁ」
冗談混じりに翔さんが笑いながら言った。
だから俺は敢えて単刀直入に切り込んだ。
「翔さんと大野さんって、どういう関係なんですか?」
いきなりの質問に翔さんが固まった。
やっぱり、すぐに聞いて正解だった。
準備の出来てない翔さんは答えられない。
「答えられない関係なんですか?」