第4章 再開
『さと?』記憶を無くしても俺のこと呼んでくれるの?
あんなに酷いことしてきた俺のこと…
しかもそんな嬉しそうな笑顔で。
翔くんの頬に触れるとドアが開く音がして、慌てて手を離した。
ベッドを囲んでいるカーテンから出ると部屋に入って来たのはニノだった。
「大野さん、翔さんは?」
「まだ寝てる。
異常は見られないから、少し様子をみてくれって…
俺スタッフさんたちに伝えてくるから、後、よろしく」
部屋を出ようと歩き出した俺の手をニノが掴んだ。
「大野さん、大丈夫ですか?」
ニノが俺の顔を覗き込むように見てきたが、俺は視線を合わせられずにいた。
「何が?」
「翔さんのことに決まってるでしょ…
責任感じてたりするんじゃないですか?」
「責任は感じてるよ…
でもこれで良かったんだよ、俺の事忘れた方が良いから翔くんは俺を忘れたんだ…
仕事に支障はないし、出来ればこのまま思い出さないでいて欲しい…」
ニノが掴んでいた腕を離した。
「そうですか…大野さんがそう思ってるのならいいんですけど」
「ニノだってそう思ってるんじゃないのか?」
「俺?まぁそりゃね、不必要な古傷を思い出して欲しくはないですけど、もう過去の事ですから…
大野さんの事を忘れている以外は、翔さんは翔さんのままですし」
「だな…記憶を無くしても翔くんは翔くんだよ…
ならこのままで問題ないだろ?
じゃあ、俺行くわ」
そう、翔くんは翔くんなんだ…
だから俺の事を忘れたまま、また一から関係を築けばいい…
恋愛感情抜きで、同じグループのメンバーとして信頼関係を築き上げていけば行けばいいんだ。