第3章 欠落
お風呂から上がって来ると翔さんはソファの上で膝を抱えて座っていた。
「…翔さん?寝てなかったの?」
「おかえり…」
声を掛けるとゆっくりと顔を上げてこちらを見て微笑む。
その姿は儚げでそのまま消えてしまいそうだった。
隣に座って手を握ると冷たくて、とてもお風呂に入った後とは思えない。
なんでこんなに冷えてるんだ?
「翔さん、寒い?手が凄く冷たいんだけど…」
コクりと頷く翔さんに何か羽織るものを取ってこようと立ち上がった。
「ちょっと待ってて、今ブランケット持ってくるから。」
歩き出そうとする俺の手を翔さんが掴む、
「…ニノが……てよ…」
俯いて小声で呟く翔さんの言葉が聞き取れない。
「何?どうしたの?」
顔をあげた翔さんは顔色は青白く血が通っていないんじゃないかと思うくらい。
「…ニノが温めてよ…」
翔さんに腕を引っ張られ引き寄せられると翔さんの唇が俺の唇と重なった。
慌てて起き上がろうとする俺の腰に腕を回しすがり付く。
「…ニノ寒い…お願い、助けて…」
俺を見上げる瞳には涙が溜まってて俺は堪らず翔さんを抱きしめた。
「翔さん…」
「…ニノ、俺の事ずっと好きでいてくれる?」
翔さんの気持ちが俺に向いた…
この時そう勘違いしなけば引き返せたのに。
翔さんの本心からではない望みを叶えてしまったから…