第3章 欠落
今の俺に出来ること。
それは翔くんの幸せを願うこと。
ニノに『幸せにしてやって』って言ったら俺には言われたくないって言われた。
そうだよなぁ、俺が不幸にしていたんだからそれをニノに頼むのは間違ってる。
それでも今、俺が願うのは君が幸せになってくれることなんだ。
その為に俺が出来ることは君に迷惑を掛けないこと。
今まで何かある毎に君がフォローしてくれていた。
だからもう何も面倒は起こさないよ…
君が俺に関わらないで済むように…
ほんとは君の前から消える事が出来たらいいんだろうけど、俺が嵐から抜けたらそれはそれで優しい君は気にするだろう。
だから、息を潜めるように、静かに静かにこの先の人生過ごしていこう。
そう思っていたのに君はそんな俺のことさえも心配するんだ。
『調子悪い?』なんて言って…
なんで俺はこの優しさに気が付けなかったんだろう…
あの頃気が付けていれば俺たちの関係は変わっていたかも知れない。
でも、もう全てが遅いんだ…
今の俺の想いは君を不幸にする。
もういいから…
俺の事は気にしないでいいから、ニノと幸せに過ごして…
そう願いを込めて俺の頬に触れていた君の手を俺から離した。