第3章 欠落
確かに頑固なところはある。
普段は他のメンバーにお任せって感じなのに、たまに言い出したら聞かないと言うか…
たぶん自分なりの拘りがある部分なんだろう。
それに対しては翔さんも分かっているのかあまり止めに入らないというか、翔さんも大野さんの考えに賛同しているのか…
とにかくこのふたりが揉めてるところを見たことがない。
「わかった!」
潤くんが突然大声をあげた。
「どうしたんです?」
「笑顔しかないんだよ」
「なにが」
「今のリーダー、笑顔しかないんだよ。
あの人怒ることは少ないけど、すぐ面倒クサイとか拗ねたりしてたじゃん。
それが今は全くないんだ…」
言われてみれば確かにそうかも…
翔さんに向けてた切ない眼差しも無くなった。
釘を差したから諦めたのかと思ったけど、そんな簡単なことじゃないのか?
翔さんを見ると表情が固まってた。
「翔さん?」
声を掛けても反応がなくて
「翔さんっ」
「え、あ…なに?」
「大丈夫ですか?」
「なにが?」
「顔色、悪いですよ?」
「そんなことないよ」
そう言いつつも俺から目を逸らした翔さん。
やはり何か引っ掛かっていたんだろう。
「なにがあったんだろ、リーダー。
なんかさぁ、達観した僧侶みたいじゃね?笑顔しかないって…
この年でそれがいいことかは分からないけどさ」
翔さんの顔が哀しそうに歪んで見えた。