第3章 欠落
あの日以来、大野さんが大人しくなった。
元々口数が多い人では無かったけど、自分から話し掛けてくる事はほぼない。
こちらから話しかけても一言二言で会話が終わってしまう状態。
それは俺だけでなく相葉さんや、潤くんが話しかけてもそう。
落ち込んでるとか、元気がないとかではないんだ。
今まで通り仕事はこなしてるし、体の調子が悪そうでもない。
笑顔も見せてる…ただその笑顔に違和感を感じる。
感情がこもってない…というか大野さん自体が気配を消してるんじゃないかと思うくらい全てに於いて『静』なんだ。
「大ちゃん、そろそろメイク行くよ?」
「ん~」
笑顔を見せ相葉さんの後ろに着いていく。
相葉さんと大野さんが楽屋を出ていくと潤くんが話し掛けてきた。
「なぁ、最近のリーダーおかしくないか?」
「そうですか?」
「笑顔なんだけど、感情が無いっていうか…なんか不自然じゃないか?」
やっぱり潤くんも同じことを感じてるんだ。
「翔くんはどう思う?」
話を振られビクッとする翔さん。
みんなが感じてる大野さんの異変を翔さんが感じていない訳がない。
「あ、うん…そうだね、いつも静かな人だけど、それ以上に静かな気はする…」
「だろ?翔くんが言うんだから間違いないよ。
てか、翔くん気がついてるならなんでほっとくの?」
潤くんが不思議そうに翔さんを見てる。
「え、なんでって?」
「だってリーダーに何かあったらいつも翔くんが動いてくれるじゃん」
「もう、大野さんのお世話に疲れたんじゃないですか?別に決まった役割ではないんだから、他の人だっていいでしょ?」
「それはまぁ、そうだけど…
でも、リーダーの事は翔くんが一番分かってるから…リーダーも翔くんの言うことなら素直に聞くじゃん。あの人意外と頑固だからさぁ」