第2章 恋心
レギュラー番組の収録の日…
いつものように翔さんが早く来ていると思って、俺も少し早めに家を出た。
翔さんしかいないと思った楽屋の前で話し声が聞こえてドアノブに伸ばした手を止めた。
翔さんと大野さん?
数日前に釘を差した大野さん…ふたりがどんな会話をするのか気になった。
『なんで大野さん?』大野さんが問いかけたが答えを貰う前に会話を自ら打ち切った。
そのまま会話が途絶え次に聞こえて来たのは大野さんを心配するような翔さんの声…
その声にまだ翔さんの気持ちが大野さんに残ってることを思い知る。
分かってはいるんだ…
そんなに早く決別出来る想いではないってことは。
俺もゆっくりで良いって言った。それでもほんとは不安で仕方がない…
翔さんが大野さんの元へ戻ってしまうんじゃないかって。
俺はドアを開け中に入った。
大野さんを見ると翔さんに向けられてる切ない目…以前は翔さんから大野さんに向けられてた目と同じだ。
「おはようございます」
「おはよ、ニノ」
「…おはよ…」
笑顔を見せてくれる翔さんと気まずそうに挨拶する大野さん。
翔さんはまだ気がついていない…大野さんの気持ちの変化を。
だったらこのまま気が付かせないようにふたりでいる時間を作らせないようにしないと。
俺はピタッとくっつくように翔さんの隣に座り大野さんに視線を送り話しかける。
「大野さん、来るの早いですね?」
「ん、道が空いてたから…」
俺から視線を逸らす大野さん…後ろめたい気持ちがある証拠だな。
「ほんとに?」
「ほんとだよ…」
俺に視線を戻した。これは嘘はないようだ。
「なら、いいんですけど」