第12章 恋敵
事の発端は、翔の学生時代の友人の結婚。
その友人は、嫁さんがニノの大ファンなのに、翔が自分の友達だと教えてなかったらしい。
翔が結婚祝いを持って新居を訪れたら、その嫁さんが大興奮。話が盛り上がって、終いには自分たちが新婚旅行に行っている間、カズナリの世話を翔にお願いしてきた。
彼女いわく、メンバーの世話はメンバーがみるべきだと…彼女の中では完全に、カズナリ=ニノになってしまってるようだ。
友人の嫁さんの頼みを断ることも出来ず、俺に申し訳ないと思いながらも1週間の世話を引き受けた。
小型犬だし、躾もしっかりされてるから、それほど手は掛からない。
が、しかしだ!
何故かカズナリは翔が家にいるときは翔から離れない。
散歩は翔にねだるし、座っていれば膝の上に乗るし、寝るときはベッドにまで上がろうとする。
『翔は寝相が悪いから、潰しちゃうよ』と言って、それだけは阻止したけどな!
写真を撮り終え、帰ると言ったニノを、あろうことか翔が引き留めようとした。
「え?もう帰るの?コーヒーぐらい飲んでいけば?」
「お気持ちだけいただきますよ」
「なんで?このあと何か用があった?
だったらごめんね、こんなお願いしちゃって」
「違いますよ…これ以上大野さんの機嫌を損ねさせると、今夜翔さんが大変な思いをするのではないかと思って」
流石だな、ニノ。俺のこと良く分かってるじゃねぇか。
それに比べてこの鈍感な嫁は…
「?どういう事?」
小首を傾げてまぁ…後でよ~く分からせてやらないとな。
「翔、あまり引き止めてもニノに迷惑だよ」
「あ、うん…ごめんね、ニノ。今日はありがとう」
「いいえ、こちらこそすみません、既に手遅れのようです。
翔さん、頑張ってくださいね」
「ん?う、ん…」
意味がわからず曖昧な返事をする翔を見て、ニノが苦笑いをして帰っていった。