第12章 恋敵
この1週間、俺には気に食わない事がある。
それは…
「ただいまぁ」
玄関のドアが開き、仕事を終えた翔が帰ってきた。
いつものようにリビングのドアを開け、翔を迎えるために玄関へと向かう。
その俺をアイツが追い越していった。
「ただいま、カズナリ。お利口にしてた?」
通常だと『お疲れさま』と出迎え、お帰りのキスをするのに
俺よりも先に翔に抱かれるなんて、なんてヤツだ!
「あっ、も~、くすぐったいよ、カズ」
あろうことかアイツは翔の唇を奪いやがった。
「おじさん、顔…
なに犬相手にヤキモチ妬いてるんですか…」
「うっせ!なんでお前がいるんだよ」
翔の後ろに立つニノが苦笑いしてた。
「智くん、俺が頼んだんだよ。
カズと一緒に写真撮って貰いたくて」
「そう言うことです。
別におふたりの時間を邪魔をしにきた訳ではありませんよ。
写真撮ったらすぐに帰ります」
「ごめんね、ニノ。上がって?」
「お邪魔します」
リビングへと向かうふたり。
「ほら、智くんもこっちおいでよ」
何が『こっちおいでよ』だ。
ニノを連れてくるなんて聞いてないぞ?
いつまでもここにいても仕方がないから、リビングへは行くけどさ。
リビングに入ると、カズナリを抱いたニノを翔が携帯で撮ってた。
「なんでそんな写真」
「ん?この前言ったでしょ?
カズナリの飼い主がニノのファンだって。
だからニノとカズナリを一緒に写真に撮ってあげたら喜ぶかな?って思って」
そりゃな、ニノのファンなら喜ぶだろうさ。
カズナリはニノにそっくりな顔をしているし、その飼い主もそれが理由でカズナリに一目惚れして飼い始めたって話しだからな。
でも、ただでさえカズナリのせいでこの1週間、俺たちの甘い時間が減ってんだ
これ以上ふたりの時間を減らされたらたまったもんじゃない。