第9章 深愛
「任せて」
そう言って翔くんのズボンと下着を同時に下ろすと、翔くんが慌てて両手で前を隠す。
「うわっ!」
「なんで隠すの?」
「なんでじゃないよ、恥ずかしいでしょ…」
顔を真っ赤に染めた翔くん…
俺に抱かれてた時は、そんな仕草見せたことなかったじゃん。
いつでも誘うような瞳で俺を見て…
いつでも俺を気持ちよくさせてくれてた。
今までは俺の為に翔くんが頑張ってくれてた…
俺が翔くんを気持ち良くさせるんじゃなくて、翔くんが俺に尽くしてくれてたんだ。
初めて翔くんを抱いた時から翔くんに任せっぱなしだった…
尽くす側と尽くされる側、気持ちひとつでこうも変わるもんなんだ。
「今日は翔くんは何もしなくていいからね」
「え?どういうこと?」
「いいから、いいから」
「智くんさっきからそればっかり」
「いいから、いいから」
翔くんの手を引き浴室に入って行った。
「はい、座って」
渋々座る翔くんを横目にシャワーの温度を確認する。
「掛けるよ~」
「うん」
諦めたのか大人しく返事をする翔くん。髪を濡らしシャンプーをしていく。
「気持ちいい?」
「うん、いいよ」
「翔くん髪触られるの好きだもんね、ま、ここは当然か…」
「え、なに?」
「いやいや、次体ね」
スポンジにボディソープを泡立てゆっくりと優しく洗っていく。
たまにビクリと体を動かす翔くん。
「ふむふむ…ここね」
「なんなの?さっきから」
翔くんが不思議そうに鏡越しに俺を見る。
「ん?翔くんが感じやすいとこ調べてるの」
途端に翔くんは顔を紅く染めた。
「なんでそんなことっ…」
「だって、俺、今まで翔くんの事ちゃんと気持ち良く出来てなかったでしょ?」
「そんな事ないよ…」
「あるよ…今までは、翔くんが気持ち良くしてくれてた…
俺がしてたことは、翔くんに突っ込んで、自分が気持ち良くなってただけだよ…
だから今まで付き合ってきた女の人たちも、すぐに俺から離れていったんだ…
俺は相手の事を考えて抱いてなかったんだよ」