第9章 深愛
自分の服をポイポイと脱ぎ捨てる智くん。
その様子を見ていたら、脱ぎ終わった智くんが俺の前まで来て、シャツのボタンに手を掛けた。
「あ、あの自分でやるよ?」
「いいから、いいから。今まで、こんなことしたことないでしょ?」
今までは恋人同士の行為じゃなかったから、ムードなんてあるはずもなく
自分で服を脱ぐ事が殆ど。
大体はお風呂に入った後だったし
洋服を脱がされる事なんてなかった。
嬉しそうにボタンを外していく智くんに対し、俺は恥ずかしくなる一方で…
服を脱がされてるだけなのに、ドキドキしてきた。
ボタンを外し終わり、腕からするりとシャツを引き抜いた智くんが、下から俺の顔を覗き込んだ。
「ふふっ、翔くん顔紅いよ?」
「だから恥ずかしいんだってば」
「か~わいい」
智くんがチュッとキスをしてきたんだけど
何故かそれすらも恥ずかしくなる。
なんだ、これ⁉︎
智くんの手がズボンのベルトに掛かった。
「下は自分でやるから!」
手を伸ばすと避けられた。
「いいから、いいから」
嬉しそうにベルトを外していく。
ボタンを外し、ファスナーを下げられると俺の恥ずかしさは限界を迎えた。
「智くん!もういいってば!」
手を止めて俺を見る。
「え~…脱がせたいのに~」
「なんでそんな事に拘るの」
「だって、普通恋人同士がエッチする時って、脱がせるじゃん?
俺、今まで翔くんの洋服脱がせたことないし…
恋人同士として一から始めたいから、恋人にすることを翔くんにしてあげたい」
智くんがそんな風に考えていてくれた事が嬉しかった。
確かに昨日途中で止めたのは、恋人同士の行為として時間を掛けたかったから。
でも、ここまでして貰おうと思ってた訳じゃなかった。
「えと、じゃあ…お願いします…」
「任せて」
嬉しそうに微笑む智くんがいた。