第9章 深愛
翔くんの運転する車で俺のマンションに帰ってきた。
「久しぶりだね、智くんの家に来るの」
エレベーターの中で翔くんが嬉しそうに笑った。
「うん、もう半年くらい来てないか…」
「そっか、そんなに経つんだ…俺が記憶なくしてから」
「ごめんね、翔くん」
「何が?」
「さっきメンバーと話しててさ
改めて俺翔くんに酷いことしてたなぁ、って思って」
「ん~、確かにねぇ…
話だけ聞けば酷いなぁって思うけどさ
俺が望んだことだから仕方ないよね」
翔くんがニコっと笑った。
「いっぱい泣いたんだろ?」
「そうだね…俺の涙の大半は智くんの為に流したと思う…
でもさ、結局離れられなかったのは俺だから…
全部俺の責任だよ」
そう言って微笑む翔くんが愛しい…
今すぐにでも抱きしめてあげたい。
エレベーターが部屋のある階に着き、翔くんの手を取って歩き出した。
玄関に入って鍵を掛けると、靴も脱がずその場で翔くんを抱きしめた。
「智くん?」
「暫くこうしてて…さっきニノの事抱きしめたでしょ?あれってさ『ありがとう』の気持ちでしょ?」
「そうだよ?俺が弱かったせいでニノにはいっぱい迷惑掛けた…
それに智くんには悪いと思うけど、ニノに愛して貰えたことは、ほんとに幸せだったんだ」
「正直言うとね?ちょっと…というか、すっごく悔しい。
俺以外の人間が、翔くんの心の中にいること
でも俺のせいだから…
ニノにも悪いことしたと思ってる
しかも翔くんの為に身を引いてくれた
もしかすると、俺より翔くんのことを想ってるのは、ニノなのかも知れない」
翔くんの顔を見ると少し不安そうな表情をしている。
「智くん…俺は智くんの事が好きなんだよ?」
「わかってるよ…翔くんには感謝してるんだ
だから、これは俺から『ありがとう』のハグ」
ぎゅっと腕に力を入れると、翔くんの腕も俺の背中に回り力が込められた。
「翔くん、俺の事好きで居続けてくれてありがとう
翔くんが諦めてたら、俺たちもう二度とこうして一緒にいることが出来なかったよ」