第9章 深愛
そう、ずっと知りたかったんだ…
何故あの時翔さんは大野さんに謝ったのか…
俺に抱かれたことを後悔したのか…
だったらその後も抱き続けた俺は罪を重ね続けたんじゃないのか
そんな風に思ってた。
でも、記憶をなくした翔さんにそれを聞くことは叶わなくて
自分の欲望のままに翔さんを抱いていた。
「ごめん、ニノ…俺その事も覚えてない…
ただ、その時智くんに謝ったのだとしたら理由はわかる気がする」
翔さんが申し訳なさそうに俺を見た。
「理由聞かせてくれる?
なんで謝ったの?俺に抱かれたから?」
「違うよ…あの時は本当にニノに抱いて貰いたかった…
狡いかも知れないけど、もう限界だったんだ…
自分の罪をひとりで抱えてることが…
智くんに無理矢理抱いて貰って、その関係を続けてきた
なのに、自分からその関係を終わりにして…
自分の我が儘で智くんを振り回した上に、智くんの人生に傷を付けたと思ったんだ」
「俺のせいじゃない?
俺が翔さん傷付けたんじゃない?」
「勿論だよ。ニノには感謝しかない…
いつも励ましてくれて
ニノと別れたいって言った時も、なんともないようにしてくれてたけど、本当は苦しめたよね?
ニノが俺の事大切に思ってくれてるのは、痛いほど良くわかったよ?」
翔さんが優しく笑い掛けてくれたから
それだけで俺の想いは無駄じゃなかったと思えた。
「ありがと、翔さん」
「なんでニノがお礼言うの?お礼言うのは俺でしょ?」
「ううん、好きな人を支えて来れたんだ…
俺の人生で幸せな時間だったよ」
「俺も、ニノに愛されて幸せだったよ…ありがと」
翔さんが立ち上がり俺を抱きしめてくれた。
「ニノ、俺絶対翔くん幸せにするから…
お前が翔くんを想ってる以上に翔くんのこと大切にするから」
「当然ですよ
じゃなきゃまた奪い取りますよ?」
「うん、わかった…ありがとう、ニノ」
大野さんも立ち上がり、俺を抱きしめてくれた。
「貴方に抱きしめられても…」
「うっせ!感謝の気持ちだよ、受け取れ!」
「はいはい、ありがとうございます
翔さんの事、頼みましたよ?」
「おぅ!」
笑顔でふたりは部屋を後にした。
これで俺も、ほんとに翔さんにさよならできる。
ありがとう、翔さん…幸せにね。