第9章 深愛
「貴方が全ての原因!
こんなに健気に想ってくれてる人に気が付かないなんて、ありえない」
「は?なんだよ?
お前今自分が一番悪いって言ったじゃん」
「それは翔さんからの謝罪を聞きたくないからでしょ?
貴方からはいくら謝ってもらっても足りませんよ」
「なんでだよ!
お前が邪魔しなければ、翔くんのことお前に抱かせなかったのに」
「智くん、落ち着いて…ニノに報告に来たんでしょ?」
語気が荒くなる俺を翔くんが宥める。
「あぁ、そうですねぇ…
俺が邪魔しなければ、あんな綺麗な翔さんを見ること出来なかった…
まぁ、邪魔した甲斐がありましたね」
「お前っ!」
「でもね…翔さんの本当に綺麗な姿見れるのは、大野さんだけなんだって思い知らされましたよ」
「ニノ?」
翔くんがニノを見つめた。
「俺ね?前に、ふたりがヤってる時の声聞いたことあるんだ」
「えっ?」
「はっ?」
驚いた俺と翔くん…なんで?いつ?
「もう4年前かな…
ツアー中のホテルで、ふたりが会う約束してるの聞いて、珍しいなって興味が湧いて…
わざとじゃないよ?
偶々部屋の前通りかかったから、部屋の中の様子を窺ったの
そしたら翔さんの声が聞こえて、余りにも色っぽかったからそのまま聞き続けちゃって…
大野さんの名前呼んで静まった
その時の声が耳から離れなくて
それから俺も翔さんの事そういう目で見るようになった」
「…う、そ…」
顔を真っ赤に染める翔くん。
「だからね、俺も翔さんに俺の名前呼んで欲しくて頑張ったんだけど、駄目だった…
翔さんが乱れてくれたのは最初の一回だけ
しかも翔さんにリードされたしね」
「ごめん、俺覚えてない…」
「だろうね…理性なくして意識飛ばしてたし」
ニノが苦笑いをした。
益々顔を紅く染める翔くん。
「しかも意識飛ばす寸前に謝ったんだよ?
『ごめんね、智くん』って…
頭の中にはさ、大野さんがいたんだろうね」