第9章 深愛
ふたりでニノの部屋の前に立ちドアをノックした。
「は~い」
ニノの声が聞こえドアが開かれた。
俺たちの姿を見るとニノはニコッと笑う。
「おはようございます、どうぞ…」
何も聞かずに部屋に招き入れてくれた。
ニノの後ろに付いて部屋に入るとニノはソファに座った。
「座ったら?」
「あ、うん…」
余りにもいつもと変わらないニノの態度に戸惑う俺と翔くん。
ふたりで並んで座った。
「で?どうしたの?朝早くからおふたりで…
翔さんの記憶が戻ったのはもうわかってるけど?」
「あのね?ニノ…」
翔くんが口を開くとニノが被るように話し出した。
「あぁ、もう謝罪とかは止めてね?
聞き飽きたし、悪いのは俺だから」
「ニノに悪いところなんてないよ…」
「あるよ、昨日言ったでしょ?
もうひとつ謝らなきゃいけないことがあるって」
確かに言ってた…今じゃなく後から謝るって。
「俺ね…大野さんが、翔さんが離れていって、後悔してるの知ってたんだ…
その時はまだ翔さん、大野さんのこと諦めきれてなくて、俺とも深い関係になってなかった
だけどね?俺、その事ふたりに伝えなかった
伝えていれば、ふたりが傷付くことなく幸せになれてたのに」
ニノの顔が苦痛に歪んだ。
「だから、俺が一番悪い…
翔さんの幸せを願っていたのに、逆に苦しめた…」
「違うよ!ニノ!ニノは俺の事支えてくれてた…幸せにしてくれようとしていたのに…
応えられなかった俺が悪い」
翔くんの瞳が悲しみに揺れた。
「違う…俺だ…俺が翔くんの事好きだって気付いていれば…」
「そうですよ」
「…は⁈」
謝ろうと思った俺の言葉を遮るように、ニノが俺を責めた。
さっきまでの苦痛の顔が嘘のように消えていた。