第9章 深愛
智くんの手が止まって抱きしめてくれた。
「東京帰るまで楽しみに取っとくよ」
俺と同じ気持ちでいてくれる?
折角想いが届いたのに、時間に急かされて、欲望だけを満たす為に貴方に抱かれたくない。
「さてと、それじゃあ荷物片付けて帰ろうか」
智くんが起き上がると手を差し出してくれ、その手を握ると引っ張りあげてくれた。
「…帰る前にニノと話したい」
そう智くんに伝えると智くんは微笑んでくれて
「そうだな…あいつには迷惑掛けたもんな
ちゃんと報告しないと駄目だよな…
今から行くか」
「え?智くんも行くの?」
俺ひとりで行って、もう一度ちゃんと謝ろうと思ってたのに。
「うん、行くよ?元はと言えば俺のせいじゃん
俺から話して謝らないと駄目でしょ」
「智くんのせいじゃないよ…俺がニノを頼ったから…」
俺のせいなのに、智くんが謝る必要なんてないのに…
申し訳なくて視線を落とすと
智くんに突然触れるだけのキスをされ、ビックリして顔を上げた。
「そんな顔しないでよ…
そうしなくちゃいけないくらい翔くんを追い込んだのは俺なんだから
それにこれは俺たちふたりの問題でしょ?
だったらふたりで行くのは当たり前だよ」
「…うん、ありがと…」
「ふふっ…それにさぁ、ニノと翔くんふたりきりにさせられないでしょ?」
「それってヤキモチ?」
「そう。もう誰にも翔くん触らせないから」
「ははっ、それは無理だわ…気持ちは嬉しいけど…」
智くんにそんな風に言って貰えるなんて、照れるしなんかくすぐったい。
「もぉ~、なんでそんな可愛い顔するかなぁ…帰ってから覚悟してよ?」
俺、今どんな顔してるの?
智くんはぎゅっと抱きしめてくれるとすぐに離れた。
「さ、行こう…ニノのとこ」