第1章 後悔
いつものように翔さんが家に来た。
翔さんに話を聞くと言った以来、大野さんに何かあると家に来て弱音を吐いていく。
そして帰るときには『いつもありがとう、ニノ』って、笑顔で帰っていくんだ。
だけど、今日はすんなり帰さないからね?
今回は翔さんも相当参ってるはず…
弱ってる所を攻めたくはないけど、翔さんの大野さんに対する気持ちが大きすぎてどんな卑怯な手でも使おうと決めた。
じゃないと翔さんがこの先も傷つき続けることになるから。
「いらっしゃい、翔さん」
「…お邪魔します」
何があったかもうわかってるから、翔さんも今回は最初から作り笑顔さえ見せない…
それだけ傷ついたんだ。
そんな翔さんの手を引いてソファに座らせるとそっと抱きしめた。
「翔さん…もう、泣いていいんだよ?」
そう声を掛けると翔さんは俺の洋服を握りしめ肩を震わせ泣き出した。
「翔さん、我慢しないで思いっきり泣きな?」
そう言って頭を撫でてあげると翔さんは堰を切らしたように大声で泣いたんだ。
「ニノっ!」
俺の肩に顔を埋め、力いっぱい俺に抱きついて…
その力の強さで翔さんの傷の深さが分かった。
だから俺も抱きしめてあげた…
もう、大野さんの元へは行かせないと、決意を込めて。
あんたに見せてあげたいよ、あんたが日頃甘えてきた翔さんが陰でこんなに苦しんでる姿を…
そしたら、いくらか気持ちが翔さんに向くかな…
でも、そんなことさせない…
翔さんが苦しんできた分、あなたも苦しめばいいんだ。