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【ONE PIECE】 さよなら世界

第16章 リアル非充実 (4)


 いま思えばその時から熱はあったんだろうな。じゃなきゃ自分から男の手を握るなんてどうかしてる。
 船長さんに怒鳴られたときから頭のなかがぐらぐらしていた。(私以外にも船長さんの声で倒れている人がいたけど、あれはこの世界の魔法なの?高度な魔法使いは呪文を唱えずとも魔法が使える、そういうこと? ザ・ファンタジー)。
 マルコはいつもならただ黙って聞くわけじゃなくてところどころで質問を挟んで確認しながら聞く。なのに今日はやけに黙っているなと思えば、マルコの手がこちらの顔面に伸びてきて、そんなの避けたいにきまっているのに私の体は鈍く、ぴたりひんやりとマルコの手がおでこに触れ「すげぇ熱だよい」と驚愕された。


 
 船には日常が戻っている。敵襲も日常の一部なのかもしれないけど、とりあえず砲弾で船が揺れるようなことはない。
 熱を出した私は華部屋で寝まくった。寝ても寝ても眠かった。トイレに起きた記憶がある。いつのまにかサイドテーブルに水が置いてあってそれを飲み干した記憶もある。けれど誰が持ってきてくれたのか考えるのもおっくうなほど睡魔はまたすぐやってきた。
 ぱちり、と目が覚める。
 熱はもうない。ポポロ島で買った目覚まし時計は六時を指している。私は飛び起きた。働かないと! まさか夜の六時だったらどうしようと思って、廊下に顔を出す。華部屋には窓がないのだ。朝日だった。よかった。さすがにそれはないか。
 すでに朝食の準備は始まっているけれど、ざっとシャワーを浴びさせてもらい、タオルで髪を拭きながら食堂に駆け込む。気分は爽快だ。真っ先に厨房に入って遅刻を詫びると、木曜当番ではなく金曜当番の人たちがいて、あれっと思っていると、リーゼントを下ろしているサッチがにこにこしていた。
「おお! よく寝てたな、ちゃん。うんうん、なんかスッキリした顔してるぜ」
 嫌な予感がする。
「あの、今日は木曜日、ですよ、ね?」
「いいえ、金曜です」
 バチコンっとウインクまでされて悪寒がはしる。なんたる失態。寝すぎにもほどがある。私は猛烈に謝罪した。
「はい、謝らなーい! そんなのサッチは聞こえなーい!」
 節までつけて言うこの人は朝からどんだけテンション高いのだろう。
「俺もね反省したの。そんで『妹見守り隊』っての作ったから。ブレンハイムにフォッサ。隊長はジョズね。この面子、熱くね?」
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