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【ONE PIECE】 さよなら世界

第15章 リアル非充実 (3)


「マルコさん、ごめん、なさい。もう、だいじょうぶ、です……」
 ちっとも大丈夫そうには見えない。でも、手に伝わるの体温を感じるうちに、〝俺は〟大丈夫な気がしてきた。
 手を握り返す。指なんて絡めない。甲板掃除をしている奴らがぎょっとしたような顔でちらちら見てくるが、結構だ。おまえらが俺の代わりにの手を握ってくれるというなら、ここへ来い。
「……は自分の世界に父親や家族がいるんだろい?」
「…………」
「『オヤジ』だ『娘』だ『家族』だって言葉がおまえさんを縛るなら、そんなのはただの言葉だからよい。好きに解釈すりゃいい。でもな、この世界におまえさんの家族はきっといない。海の果てまで探しても、を『娘』と呼んでくれるのは、あの人だけだよい」
 はゆっくり顔を上げた。さっきまで青白かった頬にいくぶん血の気が戻っている。目は充血し瞼も腫れて控え目にいって酷い顔だ。だがその眼差しの奥、暗い穴の奥底に微かに反射するものがある。
 怖がることはない。飛び込んでしまえばいい。あの人の懐の深さに恐ろしくなる気持ちもわからなくはないが、そこで溺れてしまえばいいんだ。
「マルコさんは、船長さんに『息子』と呼ばれて嬉しいんですか?」
 愚問だ。
「じゃなきゃここにいねぇよい」
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