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【ONE PIECE】 さよなら世界

第15章 リアル非充実 (3)


【♂】

 ようやく片がついた。
 この海で白ひげ海賊団をわざわざ待ち伏せする度胸は認めてやらなくもない。が、所詮、烏合の衆にならねばその度胸も発揮できなかった奴らだ。どうせならロジャーとシキの『エッド・ウォーの海戦』に並ぶくらいの気概を見せてほしかった。こちとら久々の戦闘で体力も気力も武器もあり余っていたのだ。
 唯一気がかりなのはむしろ身内で、初めての海戦を経験するだ。ポポロ島を出てからあまり元気がない。
(ハルタまでもが「ホームシックかな、あのぺちゃぱい」と心配している。そのあだ名はどうかと思ったが、それを告げると「マルコがいらっとしてる!」と声のトーンを上げるのでそれこそいらっとした)。
 敵襲の報せにおろおろするを船内の最深部に押し込んだ。船内には護衛部隊もいる。これであと厄介なのは無駄に多い敵船の数と嵐だろう。開戦まもなく降りだした叩きつけるような雨に、とくにエースはその能力の性質故にうっとうしそうにしていた。おもしろそうな能力者の船長がいたが、そいつの相手はアトモスにとられてしまったので俺は引き下がる。次々と白旗を挙げて散っていく奴らに、根性ねぇなぁ、とオヤジは呆れ顔だ。そう、今回は体が疼くといってオヤジは甲板に出てきて指揮を執った。当然ナースたちは咎めたが素直に聞くとは彼女たちも思ってはいない。
 オヤジの指揮で俺たちの士気が上がらないわけがない。戦闘そのものはあっけなく終わってしまう。この嵐さえなければじっくり積荷を改めるところだが、深追いはしないことにした。戦闘中にアトモスとブラメンコの隊が持ち帰った財宝でここは切りあげる。
 すでに雨はやんでいるがこの空模様ではまだしばらく不安定な海域が続きそうだ。すると今宵の宴の会場は食堂になるか。そのまえに甲板の掃除や負傷者・武器・弾薬の確認、宝の品定めなどが先だ。
 俺も含めて隊員の誰もが戦闘態勢から気を緩めていたときだった。
 オヤジがふとなにかに目を留める。視線の先を追えば、いつの間にか船内から出てきたが白い顔を死人のように一層白くして立ち、ピストルを手にとり見つめている。
 スローモーションみたいだった。
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