• テキストサイズ

【ONE PIECE】 さよなら世界

第2章 2月30日の来訪者 (2)


「起きろよい」
 飛び起きた。ベッド脇にマルコが立っていた。あんなに気をつけていたのに寝てしまった自分に腹が立つ。ベッドの隅で壁に背を当てながら心拍数を落ち着かせている私を横目に見て、マルコは片手に持った盆をサイドテーブルに置いた。
「冷めねぇうちに食いな」
 盆にはパンと湯気をあげるオムレツのようなものが乗っていた。首を振る。食欲のかけらもなかった。マルコは感情の読めない目でこちらを見る。やがてマルコは「そうかい」と小さく言って首の後ろを掻く。私はあまりの居心地の悪さに「お手洗い行ってきます」と言い捨てて部屋を出る。監視役は追ってこない。
 
 トイレの鏡で自分の顔を凝視するが、隈が濃く顔色がひどいだけでなんら変化はない。べつのことに気づく。私、眼鏡もコンタクトもしていない。なのに視力はコンタクトをしているときと変わらない。どういうことだろう。外見は変わらないが、やはり私の体も異世界仕様になってしまったのか。それとも異世界の光景が私の視力に合っているのか……。だめだ。これ以上は泥沼にはまる。
 どうしたら戻れるのか。考えるべきことはそれに尽きる。船長曰く、私は落ちてきた。空から。落下の感覚は覚えている。だとすれば、もういちど落ちてみれば戻れるんじゃないか。私は甲板へ出る道を探した。何人もの人とすれ違う。誰もが好奇の目で見てくるが、私に襲いかかってくるような気配はない。そのかわり「お、昨日の……」とか「マルコが……」とか遠巻きに噂されるのが聞こえる。そうだ。昨日、私は勢い余って皆の前で上裸になったのだった。とたん私は引き返したくなった。でもどこへ? 足を運ぶ先を失っていると、前方の扉からぬっと現れたのは見事なリーゼント頭だった。
「あれ、嬢ちゃん。マルコは一緒じゃないのか?」
 顎を撫でながら私の目を覗きこんでくるのでのけぞる。
「サッチ様特製オムレツ、食べた? いまそんなに在庫ねぇから大したもんできなかったけどな」
 にっと笑う。コックなのだろうか。私はぺこりというかベコっと勢いよくお辞儀をして逃げるようにその場を離れた。
/ 86ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp